パリ・レポート

一週間ご無沙汰してしまいました。

エストロの率いるPMS合唱団のパリ公演に参加してきました。

茅ヶ崎では合唱の集いとみっちりの自主練習が行われていたのですが

すみません、代わりにパリ・レポートなど。

エストロは海外でも巧みにオーケストラの心をとらえ、素敵でした。

はまゆうでもみんなで海外に行けたらいいですね。

きっときっと楽しくて充実の珍道中になることまちがいなし♪




パリ・マドレーヌ寺院 フォーレ「レクイエム」演奏会  2015/11/4


 

フォーレの命日に、彼の「レクイエム」を初演が行われた教会・マドレーヌ寺院で演奏するという企画。PhiliaMessiah Singers パリ公演に参加してきました。


マドレーヌ寺院はパリのほぼ中心部、コンコルド広場を正面に臨み、周りには名のある老舗や華やかなブランドショップが立ち並んでいます。ギリシャ神殿のような柱のある荘厳な建築の威容にまず圧倒されました。中には窓がなく、温かみのあるシャンデリアの灯と、供えられた小さなキャンドルが揺らめいている光のみ。高い高いドームと美しい天井画、壁画の数々、正面にある大きなマグダラのマリア像、両脇にも数多くの聖像が立ち並び、本当にここで歌うのかと体がすくみました。


マリア像を背にして祭壇に立ち、声を出してみます。たくさんの倍音に包まれて声が立ち上っていき、花火がしだれ柳の光の滴を描くようにゆっくりと降りて消えていきます。豊かな倍音は、響きが青白い光を放っているようにも聞こえます。長い残響というような形容では言い表せない音の空間です。


合唱には現地の助っ人メンバーが加わりました。若くていい声のイケメンが10名ほどと、音大生らしきキュートなアルトが3名。フランス語はもちろんわからないし、とっさに英語も出てこないので、拙い片言英語と身振り手振り、楽譜を指さしたりでコミュニケーションは情けない限りでしたが、歌い始めればやろうとしていることは通じるもので、力まず響きに身を委ねるような歌い方や、本場もののフランス語の発音に寄り添って歌うなど、得難い経験をさせていただきました。


オーケストラはフランス最古の歴史を持つというオルケストル・パドルー。マエストロのリハーサルは英語で行われましたが、初めのメッセージはフランス語で誠意を感じる語りかけがなされました。現地で初めて会うオーケストラとオスガニスト、ソリストたちとの音楽創り。日本にいる時と同じように、クリアで端的な指示で演奏がどんどん変わっていく様子を目の当たりにすると、音楽が本当に豊かな共通の言語なのだということを改めて感じます。ソプラノのソロはバルコニーから降ってくる天使のような歌声。マドレーヌ寺院が指名するソリストだけあって、聖堂の響きの使い方が素晴らしかったです。


演奏会は夜8時半の開演。帰宅して食事を済ませてから出かけてくる演奏会は結構多いのだそうです。お客様は座席の2/3ほど、500名くらいは入っていたでしょうか。日本からやってきた無名の合唱団をわざわざ聴きに来てくださるなんて、本当にありがたいことです。


さていよいよ本番!緊張はしているのですが、ずっと一緒に演奏をしてきたかのような不思議な一体感があり、独特の残響との対話も味わいながら歌うことができました。荘厳な空気の中、いい音楽を創ろうとする共通の意思に支えられ、研ぎ澄まされた集中力の中での演奏は心が震えました。演奏の最後の音が消えた後の静寂の時間には、その場にいたすべての人たちの祈りが込められていたように思います。
あの深い沈黙と、お客様が立ち上がって送ってくれた拍手の温かさを思い出すと涙がにじんできます。


111日朝に成田を立ち、6日早朝には帰ってきたので、パリ滞在は実質3日。練習とオケ合わせと本番の日々で、シャンゼリゼ通りも眺めただけでお散歩もできず、観光らしきことはほとんどできなかったのですが、あの演奏の思い出が最高のお土産です。


パリを立つ朝、空港に向かうバスの中できれいな朝焼けをみました。カメラが壊れてしまったので、映像は心の中に焼き付けて。また行きたいなぁ。