耳を開く

とりあえず自分の音のことに精いっぱいの状態だと

合唱なのに回りの音が聞こえなくなってしまう。

ていねいに音を合わせていく練習は、

大事なことをおろそかにしていた反省と緊張感で始まる。

和やかに笑ったりという空気ではないが、

私はこういう練習がとても好きだ。

混沌として塊でしか聞こえていなかった音が

プリズムを通したようにきれいに見え始めるからだ。

そこに倍音の色合いも加わってくると更にうれしい。

研ぎ澄まされていく空気の中で、これ!と思って出した音に、

そう!というマエストロの一言が返ってくると

体の中に光が射し込む。

パワーと勢いのある曲だが、それだけではただの大騒ぎ。

整ったハーモニーの持つ力が加わって、この曲の魅力が完成する。

いつもいつも忘れずに

耳を開き、お互いを聞きあい、美しく力強い響きを創ろう。